Home > 不倫・浮気 > 突然の海外赴任2

突然の海外赴任2

突然の海外赴任1続き

その様な事を考えていた私は、いつしか眠ってしまったのですが、嫌な夢に魘されて飛び起き、時計を見ると、長い夢を見ていた感覚なのに1時間しか経っていません。
夢の中の私は、妻を探し回りあのアパートに行って郵便受けを見ると、稲垣の下に妻と娘の名前が書いて有ります。
それを見た私が絶望感と激しい孤独感に襲われていると、妻と稲垣が手を繋ぎ、楽しそうに話しをしながら出て来て、私の事など見向きもせずに通り過ぎて行きました。
それまでは2人だった筈なのに次の瞬間、稲垣のもう一方の手には娘の手が繋がれているのです。
私は走って追いかけ、惨めな格好で妻の足に縋り付いたのですが、見上げるとそれは妻では無くて稲垣で、私を見下ろして不気味に微笑んでいました。

すぐには夢と現実の区別が付かずに、不安な気持ちのまま妻を捜したのですが何処にもいません。
キッチンの椅子に座り込んで考えていると、夢の中で感じた気持ちが本心で有り、夢の中の私が、今の私の本当の姿ではないかと思え、妻は稲垣のアパートに行ったのかも知れないと心配になって玄関まで行った時、妻がドアを開けて入って来ました。

「帰って来たのか。どうせ奴の所に行ってしまい、もう帰って来ないと思ったから、これで楽になれると思っていたのに帰って来たのか?」
「違います。もうあそこには二度と行きません。」

妻が戻って来てほっとしている筈なのに、口からはこの様な言葉しか出て来ませんでした。
やはり私には、妻に縋り付く様な真似は出来そうにも有りません。

「それなら何処に行っていた?」
「すみません。理香に会って、お仕事が忙しいから少しの間会えないと言ってきました。」

私は、また嫌な事を言って妻を虐めたいと思いましたが、妻の言葉には感情が無く、目も虚ろとしていて様子がおかしかったので、何も言わずにキッチンへ行くと、妻も夢遊病者の様に後をついて来て椅子に座りました。

「上手い事を言って、本当は稲垣の所に行こうと思ったのでは無いのか?何か忘れ物を取りに来たのでは無いのか?お前の言う事は何も信用出来ない。」
「いいえ、本当に理香に会いたかっただけです。勝手な事をして、ごめんなさい。」

妻は、嫌味を言われても泣く様子も無く、焦点の合わない目でテーブルをじっと見ながら、口では謝っていてもやはり言葉に感情が有りません。

「俺の質問に答えるのが嫌で、逃げようと思ったのでは無いのか?」
「いいえ、もう何でもお話します。」

私は『もう』という言葉が気になったのですが、

「それなら訊くが、おまえは稲垣の事が好きになったのか?もう俺の事は嫌いなのか?」
「支店長の事は好きです。でも恋愛感情では有りません。私が愛しているのはあなただけです。」
「意味が分からん。好きだが恋愛感情とは違う?それなら、どうして抱かれた?本当に俺を愛していたら、その様な行為はしないだろ?さっぱり意味が分からない。俺が不審に思っている事に答えてくれ。もう昔の事だが、そもそも俺が初めての男だったと言うのは本当だったのか?俺と関係を持つ前に、稲垣とそういう関係は無かったのか?本当は何か有ったのだろ?」
「はい、あなたと知り合う前にキスまでは有りました。ベッドで抱き合ってキスはしましたが、それ以上の関係は無かったし、キスをしたのも恋人としての愛情からでは有りません。」

私は、妻の理解不能な話から、妻と稲垣との得体の知れぬ、普通では無い関係を感じていました。
相変わらず妻の言葉には感情が感じられず、魂が抜けてしまったかの様な状態です。

「稲垣との繋がりを、最初から詳しく教えてくれ。俺の知らない智子全てを教えてくれ。」

妻は、ゆっくりと頷いて、淡々と話し出しました。

「あなたもご存知の通り、私の父は酷い暴力を振るっていて、それは母だけに留まらず、私や姉にも及んだ為に、母は離婚を決意しました。幸い父の実家は、資産家だったらしくて、父の両親は私達と完全に縁を切らそうと、今後、養育費やその他の権利を全て放棄するのを条件に、多額の手切れ金を払ってくれたので、私達の生活は困らなかったのですが、それまで優しかった母が、寂しさからか、お酒に溺れる様になり、絶えず違った男を家にまで連れて来る様になりました。母の連れてくる男達は私や姉を嫌らしい目で見る事が多く、中には胸やお尻を触ってくる男までいて、父の事で男性不信になっていた私は、余計に男性を避ける様に成って行きました。」

妻が短大生の時に母親は病気で亡くなったのは聞いていましたが、まさか母親がその様な状態だったとは知らず、それまで親子3人幸せに暮らしていたと、勝手に思い込んでいました。

妻が私に話した事の無かった、私と知り合う前の話は更に続き、

「母が死んでから姉と2人、寂しいけれど平穏な生活を送っていました。しかし、私はこのままでは駄目だと思い、男性のお客さんとも接する事が多い、銀行員を希望して就職したのですが、働き出して半年を過ぎた頃に姉が結婚をして、義理の兄が私達の所に転がり込む形で3人での生活が始まってしまい、私はその義兄の私を見る目がどこか怖くて、慣れない仕事と家庭の両方が辛く、気の休まる場所は何処にも有りませんでした。私は義兄と決して2人だけにはならない様に気を付けていたのですが、ある時姉が私には何も言わずに買物に行き、義兄は鍵も掛けずに油断していた私の部屋に入って来て、私をベッドに押し倒しまいた。幸い姉が忘れ物をして帰ってきた為に事無を得ましたが、その後、姉がとった行動は義兄には怒らずに私から誘ったと言う義兄の話だけを信じて、その話になる度に私を叩き、私を罵倒する事でした。私は耐えられなくなって家を飛び出し、向かった先が彼のアパートです。」

妻は、姉が嫌いだと言って全く付き合いが無かったので、それを不思議には思っていても、まさかその様な事が有ったとは考えた事も有りませんでした。
妻が辛い人生を送って来た事を知り、思わず抱きしめたくなりましたが出来ません。
何故なら、妻が向かった先は稲垣の所なのです。

妻の話に引き込まれていた私も、今の支店長という言葉で、妻に裏切られた現実に戻ってしまい、とても抱き締める事は出来ませんでした。
私が何も言わなくても、まるで他人事でも話しているかのように、淡々と話し続ける妻の話によると。

稲垣は、妻が仕事で分からない事が有ったりした時に、優しく教えてくれる頼りになる先輩で、当時の支店長は女性にも厳しく、ミスなどが有ると顔を真っ赤にして怒鳴ったそうですが、ただでも男性に恐怖心をもっていた妻が泣きそうになっていると、稲垣は必ず助け舟を出してくれ、後で優しく慰めてくれたそうです。

妻は、稲垣だけは他の男とは違うと思い始め、やがて全幅の信頼を置く様に成っていたので、自然と足は稲垣のアパートに向かったのです。
何処にも行く所の無い妻は、その夜稲垣のアパートに泊めてもらい、次の日からアパートが見つかるまでの一週間は、当時稲垣と婚約していた今の奥さんの所で世話になったそうです。

「その時、稲垣とキスをしたのか?婚約者がいながら、あいつはおまえに迫ったのか?おまえもその様な事をしておきながら、よく奥さんの世話になれたものだな。」
「違います。そんな嫌らしいキスでは有りません。多少奥様には悪い気もしましたが、罪悪感を持ってしまうと私達の関係が、その様な関係だという事になってしまう。上手く説明出来ませんが、その様な感情はお互いに無かったです。父のようで父とも違う、兄のようで兄とも違う、やはり上手く説明出来ません。ただ、恋愛感情は無かったです。」

満員電車で男と肌が触れてしまうのも嫌だった妻が、稲垣にベッドで抱き締められた時、不思議と男に対する嫌悪感は無く、逆に何故か安心感を強く感じたと言います。
抱き締めながら、

「ごめん。でも決して嫌らしい意味でしているのでは無い。ただ君を守りたくなってしまう。大事な妹の様な感覚で、抱き締めたくなってしまった。」

と言いながらキスをして来たそうですが、ただ上手い事を言っているだけで、本当はその気だったのでは無いかと思ってしまいます。
私には、婚約者の事や銀行の事を考えてしまい、その先に進む勇気が無かっただけだと思えるのですが。

妻は稲垣に対して良い印象、良い思い出だけを持ったまま、また同じ支店勤務となってしまいます。

「あなたと結婚してから、偶然また一緒の支店になった時期、私は不妊に悩んでいて、その悩みも聞いてもらい・・・。他にも色んな相談に乗ってもらったりしました。」

妻が途中押し黙ってしまった事が少し気になり、

「どうして途中で黙ってしまった?その時も何か有ったのか?」

すると、今までとは違って妻の瞳に光が戻り、強い口調で、

「何も有りません。当時の事を思い出していただけです。周りの人から会えば挨拶の様に子供は、まだかと言われ、辛かった時の事を思い出してしまっただけです。」

その時の事を言われると、私は何も言えなくなってしまいます。
若さのせいには出来ませんが、当時気持ちに余裕も無く、この事で妻とはよく言い争いもしました。
私自身、友人や同僚に種無しの様な言い方をされたり、無神経な奴にはセックスが下手だからだとまで言われ、私も辛いのだと言って、妻への思い遣りが足りなかったと反省しています。
当時の事を思い出したからなのか、妻は正気に戻ってしまい、

「本当なら離婚されても仕方が無いです。それだけの事をしてしまいました。愛しているのに、大事なあなたを裏切ってしまいました。私からは何も言えない立場だと分かっています。でも離婚だけは許して下さい。あなたと別れるのは嫌です。」
「上手い事を言って、本当はその逆だろ?自分の歩が悪いままで離婚をしたく無いだけだろ?」
「違います。それだけは信じて。今でもあなたを愛している事だけは信じて。」

私だって信じたいのです。
しかし、信じる事が出来ない事をしたのは妻なのです。

「離婚する事に成ったとしても、このままでは気が収まらない。全てを知らないと、一生俺は立ち直れない気がする。全て聞かせてくれ。」
「はい、必ず話します。話せるようになったら必ず話しますからり、今日はもう許して下さい。」

そう言うと、妻は走って寝室に行ってしまったので後を追うと、妻はベッドにうつ伏せになって泣いていました。
娘の所に行ってから、何処か様子がおかしい事が気になっていた私は、

「どうした?実家で何か有ったのか?」

妻は、すぐには答えずに、暫らく声を出して激しく泣いてから、

「理香に会いたくて行きました。暫らく会えないと言ったら、理香は泣いて愚図るかも知れないと思い、その時の言い訳まで考えながら行きました。それなのに理香は・・・・・・・・。」
「理香がどうした?何が有った?」
「理香は『いいよ。』と一言だけ言って、笑いながらお義父さんの所に走って行ってしまいました。いったい私は、何をしていたのだろう?理香はもう私を必要とはしていない。母親を必要とはしていない。理香が生まれた時、この子さえいればもう何もいらないと思ったのに、この子だけは、私の様な辛い思いは絶対にさせないと思っていたのに、結局辛い思いをさせてしまう。でもこれは全て私がしてしまった事。私はとんでもない事をしてしまった。私は今迄、何をしていたのだろう?」

妻は、多少は罪悪感に目覚めたのだと思いましたが、それは娘に対してだけで、私に対しての罪悪感が本当に有るのかどうか、未だに信じきれていない私の怒りは収まっておらず、苦しむ妻に追い討ちを掛ける様に、

「今頃気付いても遅い。おまえは父親を憎んでいるが、同じ事をしたのだぞ。暴力ではないが、それ以上に俺は傷付いた。理香もこの事を知れば、一生おまえを怨むぐらい傷付くだろう。母親に対してもそうだ。色々言っていたが、おまえに言える資格など無い。おまえの母親は色んな男と付き合ったそうだが、離婚していたから独身だったのだろ?それに引き換え、おまえは夫が有りながら、他の男に跨って腰を振っていたのだろ?おまえの両親の事を悪く言いたくは無いが、人を傷つける事が平気な父親と、例え寂しかったとは言っても相手も選ばずに、オチンチンさえ付いていれば、誰にでも跨って腰を触れる母親。おまえのしていた事は両親と同じだ。いや、それ以下だ。」

ここまで酷く言いたくは無かったのですが、話している内に自分で自分を抑える事が出来なくなってしまいます。
自分の言葉に反応しては、段々とエスカレートして行ってしまいます。

***

妻は、その後一言も話す事無く、泣き疲れて眠ってしまいました。
翌朝目覚めると、妻は朝食の仕度をしていて、味噌汁の良い香りがして来ます。
日本に帰って来てからはホテルの食事以外、店屋物かコンビニの弁当しか食べていなかったので、久し振りの妻の手料理に一瞬喜びましたが、今の妻との関係を考えれば食べる気になれません。

「俺のはいらないぞ。おまえの汚れた手で作られた物など、口に入れる気になれない。そこのコンビニに行ってパンを買って来い。パンは1個でいいが牛乳も忘れるな。」

妻は、慌ててエプロンを外すと、財布を持って走って出て行きました。

「何だこのパンは?奴はこんなパンが好きなのか?俺の好みも忘れたのか?俺が好きなのは干しぶどうの入ったパンだ。」

別に何のパンでも良かったのですが、一言でも文句を言ってやらないと気が収まりません。
この様な事を続けていては駄目だと思いながらも、止める事が出来ないのです。
この様な事を続けていては、妻が狂ってしまうかも知れないという思いも有りましたが、私の方が既に、精神的におかしくなって来ているのかも知れません。
干しぶどうパンを買って、走って戻ってきた妻に、

「悪い、悪い。タバコを頼むのを忘れた。」

妻は、銘柄も聞かずにまた小走りで出て行くと、私が以前吸っていたタバコを覚えていたので、それを買って来たのですが、私は赴任中に向こうで軽いタバコに変えた為に、日本に帰って来てからも、以前とは違う銘柄の軽い物を吸っていました。

今の状態では、妻はそこまで気付く筈が無いと思っていても、私は嫌味ったらしく残り少ないタバコを持って来て、妻の目の前に置き、

「それも稲垣が吸っていた銘柄か?俺が今吸っているのはこれだ。見ていて知っていると思っていたが、俺の事などもう眼中に無いか?」
「ごめんなさい、気が付きませんでした。すぐに交換して来ます。」
「それでいい。おまえの好きな男と同じタバコを吸ってやる。」
「支店長はタバコを吸いません。」

流石の妻も私の嫌がらせに怒れて来たのか、少し語気を強めて言いました。
しかし私はそれがまた面白く有りません。

「そうか。タバコを吸わない男がおまえのお気に入りか。それは悪かったな。今時タバコを吸う人間なんて最低だと言っていなかったか?さすが40代で支店長になれる様なエリート様は、俺の様な人間とは違うな。おまえが俺を裏切ってでも、一緒になりたい訳だ。」
「そんな事は思っていません。それに支店長と一緒になりたいなんて思っていないです。」
「どうかな?どうせ2人で俺を馬鹿にしていたのだろ?今時タバコを吸っている駄目人間と笑っていたのだろ?」
「いいえ、支店長も以前はヘビースモーカーでした。タバコを吸う人がどうとか、出世がどうとかではなくて、お医者様に止められたので今は吸っていないだけです。」
「俺がタバコを変えた事も気付かないおまえが、流石にあいつの事は何でも知っているのだな。将来を共にする、愛する旦那様の事は何でも知っているという訳か。」

また僻みの様な、嫌がらせを言ってしまいました。
何を言っても私の気が収まる事は無いのに、私自身いつまでこの様な事を続けてしまうのだろうと不安になります。

「言い忘れたが、今日、奴の奥さんが来るぞ。」

それを聞いた妻の顔が蒼ざめて行き、

「許して下さい、私は会えないです。典子さんに合わせる顔が有りません。とても会えないです。どうか許して下さい。」
「そうか、典子さんと言うのか。おまえがしてしまった事の責任ぐらい自分で取れ。会って謝罪しろ。奴と再婚したいのなら、ついでに離婚して下さいとお願いしたらどうだ?」

私の嫌がらせも妻の耳には入らない様で、ただ俯いていて、少し体が震えている様にも見えました。

***

昼食に親子丼をとったのですが、妻は箸もつけません。

「どうした?食べろ。」
「典子さんに会うのだけは許して下さい。典子さんには会えないです。」
「子供みたいな事を言うな。離婚を前提の別居か何か知らないが、今はまだ夫婦だ。頭の一つも下げられないのか?もういい、その話は後だ。折角俺が注文してやった物を食べない積もりか?」

妻は一口食べましたが、また箸を置いてしまいました。

「どうして食べない?奴の言う事は何でも聞いて、あんな卑猥なパンティーまで穿いていたおまえが、俺の言う事は、おまえの身体を心配して言っている事すら聞こうとしない。本当なら、俺は稲垣や奥さんに会いたくなければ会わなくても良い立場だ。それを一緒に居てやろうと思っているのに。もう分かった。俺は出掛けるから3人で話し合え。」

すると妻は、口いっぱいに頬張り、お茶で流し込む事を繰り返し、時々吐きそうになっています。

「そうだ。残さず全て食べろ。」

空腹も辛いのですが、食欲も無いのに無理やり食べさせられるのも同じ位辛く、一種の拷問ともとれます。
妻を言葉で虐めるだけで無く、身体への虐めを始めた自分が恐ろしくなりました。

夜になって稲垣から電話がかかり、既に途中まで来ていたのか、それから10分ほどで来た奥さんは、小柄で可愛い感じの方なのですが、ここに来る途中も泣いていたのか、目の回りの化粧が落ちていて、折角の可愛い顔が台無しです。

私が妻の待つ座敷に案内すると、部屋の隅でうな垂れて正座している妻を見つけて駆け寄り、前に座って妻の両肩を掴んで揺すり、

「どうして?どうして智子さんなの?どうして?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」

私があえて止めずにいると稲垣が、

「もう、そのぐらいにしておけ。悪いのは俺だ。」

別居の原因が奥さんの浮気では無いと確信していた私は、私と同じぐらい辛いで有ろう奥さんに対しての、横柄な口の利き方に怒りを覚え、

「悪いのは俺だ?何を格好つけているんだ?まだ女房の気を引きたくて、いい男を演じているのか?悪いのはおまえだと認めているのなら、おまえ一人で全ての責任を、今すぐにとってもらおうじゃないか。」
「どの様に責任をとらせていただけば良いですか?」
「馬鹿か?責任のとり方も分からないで、偉そうに言うな。泥棒が捕まってから、泥棒は俺だと威張っているのと何も変わらないぞ。」
「すみません。威張っていた訳では。」
「今日はどの様に責任をとって、どの様に償うのか考えて来ただろうな?」
「ご主人の気が済む様に、出来る限りの事は致しますので、どうかご提案頂けないでしょうか?」
「俺に言わせてもいいのか?出来る限りの事をしてくれるのか?それなら、おまえが何度も何度も汚した女房の身体を、以前のきれいな身体に戻してくれ。俺の壊れた家庭を元に戻せ。俺は一生この事を忘れずに、苦しんで生きなければならない。そんな人生は嫌だから、俺からこの記憶を消してくれ。時間を単身赴任の前に戻してくれ。」

その時、稲垣の奥さんは声を出して泣き崩れ、妻は私の前に来て畳に額を擦り付けながら、

「あなた、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

しかし私は、そんな妻を無視して、

「おい、何とか言えよ。おれの希望を出来る限り叶えてくれるのだろ?」
「出来ません。どれも出来ないです。どうか私に出来る事にして下さい。お願いします。」
「そうか。それなら現実に出来る事を頼もう。去勢してくれ。いや、全て取ってしまって、性転換してくれ。そうすれば過去は消せなくても、今後は少し安心出来るかも知れない。どうせこの様な事が平気で出来る2人だから、今も謝りながら腹の中では舌を出しているのだろ?これからも目を盗んで会うのだろ?おまえが女になれば少しは安心出来る。これなら現実に出来る事だ。」

無理を言っているのは分かっていまが、これは私の本心なのです。
稲垣も妻と同じ様に額を畳につけて、

「すみません。私には出来ません。」
「努力するから何でも言ってくれと言いながら、何もしてくれないのだな。俺にこれだけの苦しみを与えておきながら、銀行には知られたくない。性転換も嫌だ。おまえは本当に償う気は有るのか?おまえは何も失わないじゃないか。」

すると妻が話しに割り込んできて、

「私が悪かったです。あなたを裏切ったのは私です。あなたには私が償います。どの様な償いでもします。あなたの言う事なら何でもします。」

妻の稲垣を庇う様な言葉で更に頭に血が上り、ネクタイを持って来ると妻に投げつけて、

「それなら死んでくれ。おまえと結婚した事が人生最大の汚点だった。今からでは人生のやり直しは出来ないかも知れないが、過去の汚点だけは消し去りたい。それで首を吊って死んでくれ。ただし、おまえの遺体なんて引き取りたくは無いから、誰にも見つからない様な所で死んでくれよ。」

妻は、体に当たってから目の前に落ちたネクタイを見詰めたまま動きません。

「何処で死のうか考えているのか?そうか、俺が無神経だった。俺が身に着けていた様な物で死にたくないか。死ぬときぐらいは、愛する人の物で死にたいよな。稲垣、おまえのベルトを渡してやってくれ。」

それを聞いた妻は、ネクタイを力一杯掴んだのですが、やはり動こうとはしませんでした。

「間違っても車に飛び込む様な真似はするなよ。おまえの様な人の心も持たない人間の為に、見ず知らずの人に迷惑を掛けるなよ。」

当然、妻は出来ないと言ってすぐに許しを請いながら、泣き崩れると思っていたのですが、妻はそのままの状態で動かず、涙は流していても泣き崩れる事も無かったので、私の目論見は狂い、思惑通りに事が進まないことにも腹が立ちました。

何度謝らせても私の心が晴れる事はないのですが、それでも常に謝罪の言葉を聞いていないと不安なのです。
私が次に思いついたのは娘の事でした。

「理香の事は心配するな。おまえの様な女にならない様に、俺がしっかりと育てる。」

すると妻は顔を上げて、縋る様な目で私を見詰め、

「ごめんなさい、出来ません。私には出来ません。理香を残して死ぬなんて出来ません。死ねばあなたの顔も見られなくなってしまう。許してください。他の事なら何でもします。」
「理香?今頃何を言っているのだ?今迄散々理香を放りっぱなしで、こいつに抱かれて喜んでいたおまえが、理香を残して死ねない?そんな物ただの言い訳だ。自分が死にたくないだけだ。それに、あなたの顔が見られなくなる?それも言うならこいつの顔だろ?言い間違えたのか?それともお得意のご機嫌取りか?あなたの言う事なら何でもすると言いながら、死んでくれと言えば死ねないと言う。本当にお前の言う事はその場凌ぎの嘘ばかりだな。」

その時稲垣が妻に助け舟を出し、

「お願いします。死ねなんて言わないで下さい。お願いします。」
「またまた色男のご登場か?何を偉そうに言わないでくれだ。それならおまえが代わりに死ねるのか?死ぬどころか、ちょん切る事すら出来ない奴が格好ばかりつけるな。」

その時、奥さんが一際大きな声で泣き出したので、怖い思いをさせて奥さんまで苦しめていると知り、

「奥さん、すみません。折角来て頂いたのに、俺の怒りばかりぶつけてしまって。でも奥さんもこれを見れば、私の怒りを少しは分かって頂けると思います。おい、死ぬのは許してやるから、奥さんの前に立ってスカートを捲ってみろ。」

妻は奥さんの近くまでは行ったのですが、その様な事が出切る筈も無く、ただ立ち尽くしています。

「何でもするからと言うので、死んで詫びろと言えばそれは出来ないと言う。スカートを上げて、お前達のしていた恥ずかしい行為を見てもらえと言っても、それも出来ない。何でもすると言うのは、いったい何をしてくれると言うのだ?これも嘘、あれも嘘、嘘、嘘、嘘、おまえが俺に言った事で、本当の事は何も無い。」

すると妻は顔を横に向けて目を閉じ、スカートの裾を持ってゆっくりと上げ始めました。

「もっと上げろ。パンティーが完全に出てしまうまで上げろ。」

私が後ろからパンティーを一気に下ろすと、俯いていた奥さんは顔を上げ、

「智子さん、これは?」

そう言ってから目を逸らすように、また俯いてしまいました。

「稲垣、おまえがやったのだな?おまえが剃ったのだな?」
「・・・はい。すみませんでした。」
「智子。確かこれは水着を着る為に、自分で剃ったと言っていなかったか?おまえの人生は嘘ばかりか?どうせ俺と結婚したのも嘘だったのだろ?好きでも無いのに嘘で結婚したのか?」
「違います。」
「何が違う?本当は俺と付き合う前、こいつの所に泊まった時から関係が有って、それからも、ずっと続いていたのではないのか?俺はもう何も信じられなくなった。」

私の言った事が当たっているとすれば、結婚してからも妻にはもう一つの顔が有り、私に見せていた顔が妻の全てだと、ずっと思っていた私は間抜けな道化師だった事になります。
私が話し終わると、ずっと泣いていた奥さんが妻の前に座り、

「智子さん、本当なの?私はずっと気になっていました。あの時、主人が昨日は夜遅かったので一晩泊めたと自分から話してくれて堂々としていたし、あなたにも悪びれた様子は無かったので、主人を信じよう、智子さんを信じようと思ったけれど、ずっと私は気になっていた。あの時からの関係なのですか?もしもそうなら、私の人生は何だったのだろう。」
「ごめんなさい。典子さん、ごめんなさい。でもあの時は、典子さんを裏切る様な事はしませんでした。それだけは信じて。」
「裏切る様な事はしなかった?奥さん、こいつらの感覚では、キスはしたがそれは裏切では無いそうだ。一晩中ベッドに寝て抱き合っていたけれども、裏切った気持ちは無いそうだ。それに、健康な男と女が狭いベッドで抱き合ってキスしていても、他には何も無かったそうだ。」

奥さんは、また妻の両肩を掴んで揺すりながら、

「嘘だと言って。智子さん、キスもしなかったと言って。抱き合っていたなんて嘘だと言って。そうでなければ、あの日からの私の人生全てが無駄に思えてしまう。」

奥さんは紙に包まれた何かを出すと、何も答えずに泣いている妻の目の前で開き、

「これは智子さんの物なの?それだけでも教えて。お願いだからこれを見て。」

妻は一瞬見たものの、すぐに顔を背けて黙っていたので、私が近くに行って見せてもらうと、それは米粒2つ分ほどの、蝶の形をした小さな金属でした。
これは私が3回目の結婚記念日にプレゼントした、イヤリングの先の花の中心に付いていた物です。
妻は、可愛いと言ってよくつけてくれたのですが、片方の蝶を何処かに落として来てしまったので、なんとか修理出来ないか購入店に持って行った覚えが有ります。

「これは妻のイヤリングの先に付いていた物です。これを何処で?」

「バスルームの脱衣場です。9年前に私の親戚で不幸が有った時に、子供を連れて泊まりで実家に行っていたのですが、帰った日の夜お風呂に入ろうとした時に、脱衣場の隅に光る物を見つけました。手に取ると蝶の形をしていたので、最初は、子供の玩具の何かかとも思いましたが、玩具でこの様な物が付いている物に心当たりがなく、これは何かアクセサリーの一部だと思いました。そう思うと悪い方にしか考えは行かずに、ずっと主人に問いただそうと思って大事に持っていたのですが、結局、主人の答えを聞くのが怖くて9年間も聞けずにいました。」
奥さんは今まで稲垣に言えなかった胸の内を、熱く話し出しました。

「私はずっと自分に自信が無かった。付き合っている頃から、主人が智子さんの話をする度に、心配で仕方がなかった。智子さんから電話が掛かってきた時や、3人で食事に行った時に、私には見せた事の無い様な主人の笑顔を見る度に、不安で仕方がなかった。私は可愛くも無いし、プロポーションだって智子さんみたいに良くないし、学校だって高校しか出ていない。私なんかと、どうして付き合ってくれているのか不思議だった。どうして一流大学を出たエリートの主人が、私なんかと結婚してくれたのか不思議だった。一晩一緒にいたと言われた時から、ずっと智子さんの影に脅えていた様な気がします。でも、主人が私の事をどう思っていようとも、私が主人を愛しているのに変わりは無いのだから、例え主人が私を愛してくれていなかったとしても、一緒に居られればそれでいいと、自分を納得させていました。主人に何度か女の影を感じた時も、相手が智子さんで無ければ、ただの遊びだから我慢しようと思ってきました。でも、智子さんだけは、嫌だった。主人や2人の子供達との、幸せな生活を壊される気がして怖かった。」
「典子、そんな事を思いながら・・・すまん、許してくれ。」

その時、稲垣は、私の前で初めて涙を見せました。
奥さんは私と違い、ずっと疑っては信じ、信じては疑って長い間苦しんで来たのかも知れません。
私は奥さんの話を聞きながら、9年前を思い出していました。
9年前といえば娘が生まれる前の年で、子供が出来ないで悩んでいた時期です。

私と酷く言い争った翌日の夕方に、妻が会社に電話をかけて来て、少し冷静になりたいので、家に戻らずに銀行から直接友達の家に行って愚痴を聞いてもらうので、帰りが遅くなるのから外で食事を済ませて来て欲しいと言われた事が有りました。

私も言い過ぎたと反省していて、次の日が休日だった事も有り、一つ返事で快く承諾したのですが、妻は11時を過ぎても帰って来ず、よく考えると妻にその様な事を話せる友人がいる事も知らなかった上に、当時は携帯も持っておらず連絡の取り様が無かったので、何処に行ってしまったのか心配で、ずっと寝ずに帰りを待っていました。

結局朝になっても帰って来ずに、私はいつしか眠ってしまいましたが、昼前に目覚めると妻は隣で眠っていて、その後も夕方まで死んだ様に眠り続け、目覚めてから何処に行っていたのか聞くと、友達の家で朝まで悩みを聞いてもらっていたと言いましたが、今にして思えばその友達とは、稲垣の事で、その時の様子だと、一睡もせずに朝まで愛を確かめ合っていたのだと思います。
悪い事は出来ないもので、おそらく脱衣場でイヤリングを外した時に落としてしまい、これから稲垣と一つになれる事に興奮していたのか、蝶が取れてしまった事にも気付かずにいたのでしょう。

「智子、何か言ったらどうだ?イヤリングを落として来た時も、関係をもったのだな?」

私が妻に問いただしても、妻は何も反論せずにただ泣いている事から、その時にも関係が有った事を確信しました。
何も答えない妻に代わって稲垣が口を開き、

「回数では無いかも知れませんが、その時一晩だけ関係を持ちました。先に話していた、結婚前に私の所に泊まった時は、本当にキスだけです。1年前からこの様な関係に成ってしまいましたが、それより前は、本当にその一晩だけです。申し訳有りませんでした。典子、すまん。」

稲垣の顔付きや話し方から、この事は本当だと感じましたが、散々嘘をついてきた2人です。
まだ何か隠していそうで、全てを信じる事は出来ません。
何より、例え一晩だけだと言っても私を裏切っておきながら、その後何食わぬ顔で生活していた妻に対して、より強い怒りを覚えます。

私は妻と2人だけで話したくなり、

「今後の事ですが、多少でもお互いの夫婦がどうするのか決まっていなければ、話し合いも違って来ると思うのです。来て頂いていて申し訳ないのですが、妻と2人だけで話してもいいですか?」

すると奥さんは頷いて、

「私も今、主人と2人で話し合いたいと思っていました。」

稲垣夫婦は、そのまま座敷に残り、私達は寝室に行き、

「ずっと俺を騙していたのだな。身体の関係はあの時だけかも知れないが、ずっと繋がっていたのだな?」
「繋がっていた?いえ、そうかも知れません。結婚してから偶然同じ支店になるまでも、何度か電話で話したりしていました。同じ支店になってからも、関係を持ったのは1晩だけですが、2人だけで食事に行った事も有ります。理香が生まれてからは疎遠になって、連絡も取り合っていませんでしたが、支店長として彼が来た時、正直嬉しかったです。」
「あいつとはどの様な関係なんだ?お互い、そんなに好きなら、奴が婚約を破棄してでも結婚すれば良かったんだ。どうして俺と結婚した?」
「違うのです。彼とはその様な関係では有りません。あなたを愛したから結婚したし、今でも愛しているのはあなただけです。彼とは結婚したいとは思っていなかったし、ましてや抱かれたいなんて思った事は一度も有りません。」

私には妻が理解出来ません。

「それならどうして抱かれた?レイプされたのか?今回もずっと脅されていたのか?」
「違います。彼はその様な事はしません。」
「それなら聞くが、抱かれて感じなかったのか?気持ち良くならなかったのか?」
「行為中は興奮もしたし、気持ち良くもなっていました。抱かれていて凄く感じてしまいました。ごめんなさい。でも、彼とセックスしたいなんて思った事は有りません。」

聞けば聞くほど、迷路の奥深く迷い込んで行く様な感覚です。
私は、妻の言葉を何とか理解しようとしましたが、やはり訳が分からずに黙っていると、暫らく沈黙が続いた後、

「彼の言う事に間違いは無いと思っていたし、彼の言う通りにしていれば、私は幸せになれると信じていました。でも、愛しているのはあなただけです。」

その後も、妻の涙ながらに話す稲垣に対する思いを聞いていて、私にも少しだけ分かった事が有ります。
妻は、父親に裏切られ、その後も男の嫌な面ばかり見せられて男性不信になりました。
その後、母親や姉にも裏切られた形になり、男性不信と言うよりは、人間不信に陥っていたのかも知れません。

信じられるのは自分自身だけになってしまい、猛烈な孤独感の中、気が付くと稲垣だけが、唯一身近に感じられる存在になっていたのでしょう。
まだ自分以外の人間を信じる事の出来る、心の拠り所になっていたのかも知れません。

妻が生まれて初めて接した、真剣に妻の事を思い考えてくれる、絶対に妻を裏切らない存在だと思ってしまったのでしょう。
鳥は、生まれて初めて見た動く物を、親だと思い込むと聞いた事が有ります。
それと同じ様に、稲垣は妻が接した初めての信頼出来る誠実な男で、それは次第に男女の枠を越えた、回りにいる人間とは全く違う、特別な存在だと潜在意識の中に刻み込んでしまったのかも知れません。

「上手く説明出来なくてごめんなさい。彼は違うのです。父親とも違うし、兄とも違う。結婚をしたい相手でも無いし、恋人という存在でも無い。そうかと言って友人とは全く違います。」

私が思うに、言い換えればそれら全てなのでしょう。
いいえ、神とまでは言いませんが、それらを越えた存在なのかも知れません。
もしも、そうだとすると、これは夫婦の愛情や絆を遥かに越えた感情だと思え、絶望的になってしまいました。

「終ったな。俺達は完全に終ってしまったな。いや、智子の中ではずっと前から終っていたのかも知れない。離婚しよう。」
「嫌です。離婚したく有りません。私はあなたを愛しています。正直、彼に言われて数ヶ月前まで離婚を考えていました。どの様にすればあなたを少しでも傷付けずに離婚出来るか考えていました。あなたと別れて彼と再婚するには、どの様にすればよいのか真剣に考えていました。彼は今でも、私と一緒になりたいと思ってくれていると思いますが、私はあなたと別れるなんて出来ないと気付きました。自分の幸せを捨ててでも、私と理香の幸せを真剣に考えてくれている彼には言えずに、だらだらと関係を続けてしまいましたが、何が有ろうと私はあなたと別れる事など出来ないと知りました。どの様な形でもいい。あなたの側にいたい。離婚なんて言わないで下さい。それだけは許して下さい。」
「だらだらと?もう無理をするな。本当にそう思ったのなら、関係を切る事が出来たはずだ。どの様な理由が有ろうとも関係を続けた。いや、智子からは切れなかったのかも知れない。それが全ての答えではないのか?」

泣きじゃくる妻に、

「明日、出て行ってくれ。これで終わりにしよう。理香は俺が育てる。」

妻は顔を上げると、私の目を見て必死の形相で、

「それは出来ません。理香をあなたに任せる事は出来ません。あなただけに負担を掛ける事は出来ません。」
「出来るさ。理香の事を負担だなどとは思わない。それに、おまえには任せられない。おまえは今まで理香の事など考えもせずに、奴に抱かれていただろ?」
「違うの。理香はあなたの子供ではないの。彼の子供なの。あっ・・・。」

私は自分の耳を疑うと同時に、目の前が真っ暗になり、思考回路は停止してしまった様です。

***

何処か遠い所で妻の声が聞こえます。

「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。」

その声は、徐々に近くなり、私を戻りたくない現実へと戻してしまいます。
現実に戻れば、悲しみから気が狂ってしまうのではないかと思っていた私は、現実に戻るのが怖かったのですが、人間の脳は上手く出来ているのかも知れません。
許容量以上の悲しみが急に襲って来た時には、心が壊れてしまわない様にそれらの全てを受け付けない様にして、守ってくれているのかと思えるほど冷静な私がいました。
きっと後になってから、今以上の悲しみが襲って来るのでしょうが。

「以前から分かっていたのか?」

妻は、流石にもう離婚を覚悟したのか、泣いてはいても、割とはっきりとした口調で、

「いいえ、考えた事も有りませんでした。彼から聞くまでは・・・。」
「奴から聞いたのはいつだ?どうして奴に分かる?」
「彼が支店長として赴任してきて、4ヵ月ほど経った頃です。」

妻の話によると、稲垣のアパートで私と妻の血液型、娘の血液型を聞かれたそうです。
血液型で性格判断でもするのかと思い、私と妻がA型で、娘がO型だと答えると、

「やはりそうか。」

妻が、何がやはりそうなのか聞くと、稲垣は立ち上がって窓から外を見ながら、

「お互いA型の夫婦からは、A型の子供かO型の子供しか生まれない。稀にそうでは無い子供が生まれるケースも有るらしいが、そんな確率はごく僅かで無いに等しい。またA型同士の夫婦からはA型の子供が生まれる確率が高いらしいが、理香ちゃんの血液型はO型。俺もO型だ。」

妻には稲垣の言っている意味が分かり、

「そんな事は有りません。確率はそうかも知れないけれど、理香は主人の子供です。」
「どうして分かる?DNA検査でもしたのか?智子は理香ちゃんが生まれてからも、2人目が欲しくて避妊をした事が無いだろ?しかし子供は出来ない。その前だって5年も出来なかった。結局、十数年避妊しないでセックスしていて、出来たのは理香ちゃん1人だけだ。その理香ちゃんが、宿った時期に私と関係をもっている。」
「でも・・・あの時は、子供は出来ないと・・・。」
「私も最近までそう思い違いしていたが、よくよく思い出せば、出来ないのではなくて出来る可能性が低いというだけで、全く可能性が無い訳では無かった。だからその前に1度・・・君にもそう説明した覚えが有る。」

妻が、その時期私とも関係をもっていたので、それだけでは決められないと言って食い下がると、

「私も智子も、不妊の原因は智子に有ると決め付けていたが、もしもご主人に原因が有ったとしたら?何度も言うが、ずっと避妊せずにセックスしていても、理香ちゃん以外出来なかったじゃないか。」

妻は、信頼している稲垣の言葉に、次第にそうかも知れないと思う様になり、問題が大き過ぎて涙も出ずに、座り込んだまま立てなかったそうです。
それを聞いた私も、その確率が高いと思いました。

昔、子供を生めない嫁は、いらないと、一方的に離縁された時代も有ったそうですが、私もそこまで酷くは無いにしても、男の勝手な考えで、妻に原因が有ると思い込んでいた時期が有りました。
思い出せば、妻が一晩外泊した後、それまで妻から誘われた事は一度も無かったのに、妻は毎晩の様に求めて来た様な記憶が有ります。
その時は、無断外泊をした事で、私の機嫌をとっているのだろうと思ったのですが、今考えると、稲垣と関係をもってしまった罪悪感からしていたのか、または稲垣との間に子供が出来てしまった時の事を考えて、私の子供だと誤魔化す為に、セックスをせがんで来たのかとも思え、

「あいつとの子供が、出来てしまっても良い覚悟で抱かれたのか?それとも、あいつの子供が欲しくて抱かれたのか?」
「違います。あなたとの子供が欲しくて・・・。」

私との子供が欲しくて稲垣に抱かれたとは、さっぱり意味が分かりません。

「理香の事は俺にとっては何よりも大切な事だ。俺と喧嘩して、あいつの所に行ったところから、詳しく聞かせてくれ。」

話している内に妻は、娘に会って帰って来た時の様な状態になっていて、淡々と詳しく話し出しました。

***

当時、妻は子供が出来ない事で、軽いノイローゼの様な状態になっていて、時々何もかもから逃げ出したい気持ちに襲われ、そのような時は、つい私に当たってしまっていたと言います。
しかし、私は情け無い事に、妻が多少辛そうだと思っていても、そこまで精神的に追い込まれていたとは気付かずに、妻が私に突っ掛かってくる事が不愉快で、つい言い争いになっていました。

「特にお義母さんから、子供はまだかと言われるのが辛かったです。お義母さんは、私を実の娘の様に思っていてくれていて、悪気なんて無く、本当に心配してくれているのが分かっていただけに、余計辛かったです。それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になるのが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。あなたの子供を生んで、あなたとの絆をもっと強くしたかった。そうなればお義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、もっと本当の親子の様になれると思った。」
「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。本当に俺との絆を強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?言っている事と、やった事は逆の事だろ?」

銀行は、昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシャクしていると話しました。

「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」

妻を女性として意識していた稲垣は、周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立ってしまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度でより落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配になり、重い気持ちで銀行を出た時に稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。

一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言いました。

「ここではお客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンションへ行って話そう。」

妻は、稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行くとリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞かされました。
疚しい関係では、無いにしても奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、不妊で悩んでいる事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずにただ妻を見詰めていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。

「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。全ての原因は子供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」
「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」
「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」
「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れていると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」
「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思い出していた。彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」
「慣れ?ですか?」
「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をする彼らは、余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。そうでないと種族が絶えてしまう。ところが人間には、その様な発情期は無くて年中発情している。言い換えれば年中発情期だとも言える。いつでも妊娠可能だ。しかし、やはり人間も動物の中の一つにしか過ぎないので、体質によっては、本当の発情期にセックスしないと、ただの排卵日にしても妊娠し難い人が少なく無いらしい。」
「いつが発情期なのですか?」
「言い方が悪かったが、残念ながらどの季節が発情期だというものは無い。身体が発情期の様な状態になっている時。つまり、身体が発情している時が発情期だ。」
「では、いつ発情しているのですか?」
「新婚時代は、身体も昂っていて、多くの場合、その時期は発情期に当たるらしいのだが、その後は人それぞれなので、いつが発情期なのか、いつ発情しているのかは分からないらしい。ただ問題なのが、その後、発情期が来なくなってしまう場合が有る。身体が発情しなくなってしまう場合が有る。興奮や快感は普通に有るので、勿論本人は気付いていないが、夫婦間でのセックスに慣れてしまい、身体が発情期にならないケースが結構有ると言っていた。それが彼の言う『慣れ』による不妊症だそうだ。そういう人の特徴は、1番にホルモンのバランスを崩してしまっている場合が多いと言っていた。2番目が、絶えずイライラしてしまう。本人は他の理由からイライラしていると思いがちだが、本能的に子孫を残そうとしているのに、身体がその状態にならない。身体が発情しない事のズレから来るイライラらしい。言い辛いのだが、今の智子さんは『慣れ』から来る不妊そのものだと思う。」

こんないい加減な話に、切羽詰っていた妻は真剣に耳を傾けました。

「どうすれば良いのですか?どうすれば正常になるのですか?」
「残念ながら発情を促す薬などは無いらしい。気持ちを興奮させる薬は有っても、気持ちの興奮と身体の発情とは全く異なるものらしい。」

妻は、稲垣の話にのめり込み、ずっと身を乗り出して聞き入っていましたが、治療法や薬も無いと聞き、気落ちして俯いてしまうと、その時を待っていたかの様に。

「ただ、方法が無い訳では無い。他の牡と交尾をする。そうすれば、それから暫らくは発情期となる。つまり、ご主人以外の男とセックスをすれば、その刺激で発情し、その後2、3ヶ月は身体が発情期に入る事が多いらしい。」
「でも、その様な事は聞いた事が有りません。」

一瞬、期待して顔を上げた妻でしたが、内容が内容だけにふて腐れた様にそう呟くと、

「私もそうだった。しかし彼が言うには、この様な事を発表してしまえば、不妊で悩んでいる人の浮気が増えてしまって世の中が乱れてしまうし、仮にご主人も納得してそうなった場合でも、その時は良くても、後々その事で夫婦仲が悪くなってしまう可能性が高いから発表は出来ないらしい。自分の患者にも浮気を進める事になってしまうから、とても言えないと言っていた。世間に発表出来ないのは倫理的な観点からだと思う。」

この話を事実だと思い込ませる為に、稲垣は必死になって話していましたが、妻は疑っているのではなくて、稲垣の話を信じていても、自分には出来ないと思っていたのでしょう。

「そう言われてみればニュースでも時々有るだろ?男性関係の派手な女性に限ってすぐに妊娠してしまい、子供を産んで殺してしまったとか、捨ててしまったとか。その様な女性は、それこそ絶えず発情期の状態になっていて、妊娠し易いのは事実らしい。」

何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も稲垣の話が終わると、いくら子供が欲しくても、やはりその様な事は出来ないと思い、また、その様な事を出切る相手もいないので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。

この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様に分かるのか。

「智子さんにその様な事が出来ないのはよく知っている。でも、君がみすみす不幸になるのを見るのは忍びない。思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。私もご主人や妻の事を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せになる為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも甘んじて受ける。」

ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。
潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。

妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。

「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」
「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。しかし、思っていただけで、何もしてあげられなかった。君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられなかった。」
「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」
「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。今まで助けて上げられなかった分、今回は何とか力になりたい。私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」

この時点では、妻はまだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れません。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。

「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。これはセックス等では無い、ただの治療だと。実際、智子さんとセックスしたいと思った事は無い。これは君に魅力が無いとかその様な問題では無くて、私にとってはその様な存在では無いという事だ。君もそうだと思うが、セックスの対照では無くて、それとは違う大切な存在だ。決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や妻を裏切る訳では無い。楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。その様な気持ちでするのだから、決して裏切りなんかでは無い。これは治療だ。そう考える様にしないか?」

稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘で妻を騙したのでしょう。

最初、本当にこの様な嘘に妻は騙されたのか?
この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事はほとんど妻に任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでしょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。
病気を治す為に、高額なお布施を払う。
悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。

そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩みが有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
心が弱っている人の、心の隙間に上手く入り込んでくる人間も少なくないのでしょう。
普通の精神状態の時には有り得ないと思う話でも、悩みを抱えていて心が弱っている時には、簡単に騙される事も有るのではないかと思うと、妻の話も有り得ない話では無いと思え、質問を続けました。

「それで、どの様なセックスをした?詳しく教えてくれ。」

私の知らない妻を知りたくて、必死の形相で聞きましたが。

「それは。それは言えないです。許してください。」

最初から、すんなり話してくれるとは思っていませんでした。
聞けば怒りが増すことは分かっていて、何故この様な事を知りたいのか、自分でも分からないのですから。
逆に妻が話したくないのは、単に恥ずかしいだけなのか?
あるいは、私には言えない様な行為をしていたのか?
それとも、私に2人の愛を語り、これ以上私を怒らす事を得策では無いと思っているのか?
何より、妻と稲垣の2人だけの世界に、私に踏み込まれる事が嫌なのでは無いのかと考えると、余計に聞かずにはいられません。

何故だか分からない、知りたいという欲望を満たす為に、咄嗟に思い付いたもっともらしい話を妻にして納得させようとしてしまいます。
そういう所は、私も稲垣と同じなのかも知れません。

「いや、俺には知る権利が有る。今まで実の子だと思って愛情を注いで来た理香が、どの様にして出来たのか知る権利が有る。そうでなければ、これからも親としてやっていけない気がする。何処でどの様にして出来た子かも分からず、血の繋がりも無い理香と、今迄通りにはやっていく自信が無い。例え俺の子供ではなくても、どのようにして出来たのか知りたい。その日あいつに抱かれたのは一度だけか?」

妻は、聞かれた事に正直に答え、私の欲求を満たせば、私が娘の事を今迄通り実の娘として接し、もしかすると離婚せずに3人で生活出来るかも知れないと勘違いしたのか、呟く様な小さな声で答え出し、

「いいえ、朝まで何度も。ごめんなさい。」
「どうしてだ?一度で充分だろ?上手い事を言っているが、おまえも抱かれたかっただけだろ。あいつとのセックスを楽しんでいただけだろ。」

流石に妻から進んで話せる事柄では無かったので、私の質問に答える形になってしまいましたが、事細かに答えさせたお蔭で大体の様子は分かりました。
妻は承諾したものの、いざとなるとまだ多少の躊躇いが有った為に、シャワーを浴びながら考えていると、妻が冷静に考える時間を与えたく無かったのか、突然稲垣が裸で入って来たそうです。
妻は恥ずかしさの余り、屈んで身体を隠して目を閉じました。

「恥ずかしがらないで身体をよく見せてくれ。私だって恥ずかしいんだ。しかし、恥ずかしがっていては、普通の男女の関係と何ら変わりは無い。これは治療だと言っただろ?そう思う事にしようと話し合っただろ?医者の前で智子さんは、いや、智子は身体を隠すのか?その方が逆にその事を意識している様で、恥ずかしいとは思わないか?」

稲垣の魔法に掛かっていた妻は、言われるままに少し足を開いた格好で立たされて、全てを稲垣の前に晒し、稲垣は手に石鹸を付けると、妻の豊満な乳房や秘所までも、愛撫するかの様に優しく洗い出しました。

次に稲垣は、これから治療に使われる、既に硬くそそり立っている物を妻の手で丹念に洗わせてから、口に含むように要求したのですが、流石に妻が拒んでいると、

「私も智子にこの様な行為をさせたくはないが、いくら医者の友人がこの時点では発情期に入っていないので妊娠の可能性は低いと言っていても、可能性が全く無い訳ではないだろうから少し心配だ。私のが少しでも薄くなる様に、一度出しておきたいから協力して欲しい。」
「・・・避妊具をつけてもらう訳にはいかないのですか?」
「ああ、性器と性器が直に触れ合った方が、遥かにその効果は大きいらしいし、他の牡の精子の存在を身体の中に感じれば、なお効果が有ると聞いた。」

妻は、自分の為にしてくれている行為だと信じていたので、仁王立ちになっている稲垣の前に跪いて硬くなっている物を口に含み、ただ妻に色々な事をさせたいだけの要求だとは思わずに、この様な行為を長くさせたくないから、早く終る様に協力してくれと言う稲垣の言葉を信じて、言われるままに、口に含んだまま根元を手で擦ったり、二つの袋までおも口に含まされたりして、稲垣を喜ばせてしまいました。

稲垣が妻の口を弄ぶ行為は更に続き、フルートを吹くかの様に横から咥えさせたり、妻の後頭部を手で押さえて腰を突き出し、妻がむせ返るほど深く入れたりしていましたが、稲垣も限界が近くなったのか、

「出そうになって来たから、口に含んだまま頭を前後に動かしてくれ。もっと早く。よし、そのまま舌も使って。そうだ。手は下の袋を優しく撫でて。そうだ、上手いぞ。」

そうさせている内に終に限界を迎え、

「よし、もう出すぞ。もう舌を使うのはいいから、強く吸う様にして、前後の動きを早くしてくれ。もっと早く。もっとだ。もっと早く。よし、出すぞ。出すぞ。」

次の瞬間妻は、稲垣の濃い物を全て口で受けとめてしまいました。

「奴のを飲んだのか?」
「いいえ、むせてしまって吐き出しました。」
「むせていなければ飲んだという事か?」
「違います。」

最終的には、妻の全てを奪われると分かっていながら、まだこの様な小さな事に拘っている情け無い私なのです。

おそらく稲垣は、まだ子供が欲しい時期だったのか避妊具を持っておらず、妻がシャワーを浴び出してからその事に気付き、妻を妊娠させてしまわないか不安になったものの、買いに行っていては、
その間に妻の気持ちが変わってしまう可能性が有るので、先に一度出しておくという様な気休めをしたのでしょうが、それと同時に妻を跪かせて思い通りに奉仕させる事で、男としての征服感を味わいたかったのだと思います。

妻は、相変わらず話したがらないのですが、それは無理も無い事だと分かっています。
仮に私が逆の立場なら、何処で会っていたかとか、会っていた回数などは話せても、どの様なセックスをしていたか等は話せないと思います。
特に相手を愛していて、それが2人の愛情表現なら尚更です。

しかし、私の知りたい欲求はまだまだ満たされずに、質問を続けずにはいられません。
妻の息遣い、喘ぎ声の1つまでも知りたくなってしまうのです。
他人から見れば未練がましい、悪趣味な事に思えるかも知れませんが、どの様に思われ様と知りたい願望が勝ってしまうのです。
質問されて、妻が言い辛そうに困った顔をすればするほど、尚更細かな事まで言わせたくなってしまうのです。

「それから寝室に行って、抱かれたのだな?どうした?答えろ。嘘をついても、後から奴に聞けば分かる事だ。」
「もう嘘をつきたくないから話せないのです。話せば話すほどあなたを傷つけ、あなたに嫌われてしまう。」
「もう充分傷付いている。理香が俺の子供では無いとまで言われたのだぞ。それ以上、何に傷付く?」

嫌うも嫌わないも妻との仲は、もうどうにもならないという言葉は飲み込みました。

「そのまま・・・バスルームで・・・。」

稲垣が洗い場に、可愛いイラストが書かれた子供用のマットを敷いて、その上に胡坐を掻いて座り、妻は稲垣に跨る格好で抱き付く様に言われたので従うと、稲垣は妻からキスをするように強要し、長いキスが終ると今度は乳首に吸い付いてきました。
この格好では、稲垣の軟らかくなってしまった物が丁度妻の秘所に当たる為、徐々にまた硬さを取り戻し、完全に硬くなると妻を下に降ろして、自分は後ろから抱きつく様な形で座り、妻の足を立膝にさせて大きく開かせ、手は後ろに回させて硬くなった物を握らせました。

次に稲垣は、左手で妻の左右の乳房を交互に揉み、右手はクリや恥穴を虐めていたのですが、妻はどうしても快感と戦ってしまい、すぐには感じなかったと言います。

「智子、喜んでするのは裏切りになるとは言ったが、治療中は何もかも忘れて感じる事だけに集中しよう。感じないと、この治療の意味が無い。何もかも忘れて乱れないと、ホルモンの分泌も悪いままだ。このままだと、裸でエッチな事をしただけになってしまう。それでいいのか?」

稲垣のこの言葉で、必死に快感を抑え込んでいた妻も堰を切った様に一気に感じ出し、狭いバスルームに響き渡る自分の恥ずかしい声で更に興奮は高まり、いつ気を遣ってしまってもおかしく無い状態になっていました。

妻は、稲垣に見られながら一人醜態を晒すのは恥ずかしく、そうかと言って稲垣の執拗な愛撫から、自ら逃げる事は出来ないぐらい感じてしまっていたので、それを避けたいが為に、稲垣の再び硬くなった物を、入れて欲しいと妻の口から要求してしまいました。

「そうか。もう欲しくなったか。それなら入れてあげるから、四つん這いになりなさい。」
「そんな格好は恥ずかしいから出来ません。後ろも見えてしまう。」
「それならこの狭いバスルームでは無理だ。他の場所に移動する事になるが、智子はそこまで我慢出来るのかな?ここをこうされても、我慢出来るのか?」
「いや。もうそこは許してください。我慢出来なくなってしまいます。」

稲垣は、妻の気持ちなどお見通しで、

「我慢しなくてもいいぞ。私がよく見ていてあげるから、智子だけ逝きなさい。思い切り逝って、私に逝く時の顔を見せなさい。」
「そんな恥ずかしい事は嫌です。一緒に。私だけは嫌。お願い、一緒に。」
「なあ智子。感じていても、これは治療だと言っただろ?智子はこれから赤ちゃんを産む身だ。医者が、診察台に上がって足を開けと言っても拒むのか?そんな事は恥ずかしいと言って拒むのか?それと同じ事だ。」

赤ちゃんと言う言葉で本来の目的を思い出した妻が、左手を後ろに回してお尻の穴を隠した格好で四つん這いになると、稲垣はすぐには入れずに、嬉しそうに硬くなった物をお尻や秘所に擦り付けて妻を焦らし、恥ずかしさに耐えられなくなった妻が、再び入れて欲しいとお願いするのを待ってから、ゆっくりと妻の中に入って行きました。

入れる時はゆっくりと動いていた稲垣も、完全に入ってしまうと最初から激しく動き、必死に耐えていた妻も、終にはお尻の穴も晒してしまい、延々と続く激しい責めに耐えられなくなって、マットに崩れ落ちてしまいました。

稲垣に見られながら、自分だけが醜態を晒すのが恥ずかしくて要求した交わりも、稲垣は一度出していた為に、結局一人だけが恥を掻いてしまうと言う結果に終りました。
それも、私にも余り見せたがらなかった恥ずかしい格好で。

まだ終っていなかった稲垣は、妻の腰を掴むと持ち上げて、また恥ずかしい格好にさせ、今度も初めから激しく動いた為に、妻はまた稲垣を待たずに崩れ落ち、次に腰を持ち上げられた時には、妻に両腕で身体を支えるだけの力は無く、お尻だけを突き上げた格好で稲垣を奥深く受け止め、妻も同時に3度目の頂上に登り詰めました。

先に一度出させたのは、妻をじっくりといたぶる目的も有ったのかも知れません。
稲垣は一石二鳥も三鳥も考えていたのでしょう。
稲垣は、やはり妊娠が心配だったのか、また妻にお尻を突き上げた体制をとらせ、今迄自分の欲望を打ち込んでいた場所に指を2本入れると、シャワーを当てながら掻き出す様な、中を洗う様な動作を繰り返していたのですが、指とシャワーの刺激で、妻は、また恥ずかしい声を漏らしてしまいました。

「おいおい、綺麗にしてやっているのに、また感じ出したのか?智子は普段の大人しい様子からは、想像もつかないほどエッチが大好きなのだな。独身の男子行員はみんな智子の事をお淑やかで優しくて、結婚するなら智子の様な女が理想だと言っているが、お尻を突き出して洗ってもらいながらも感じてしまい、嫌らしい声を出しているこの姿を見せてやりたいものだ。逝く時も激しいし、みんな驚くだろうな。」

とても治療をしているとは思えない言葉にも、中で動き回る二本の指の下で硬くなり、包皮から半分顔を出してしまっている小さな突起に、空いている親指で新たな刺激を加えられては、何も言い返せずに、ただ嫌らしい声を上げながら、腰をくねらす事しか出来ませんでした。

「腹が減ったから食事に行こう。」

その声で我に返ると、いつの間にかリビングのソファーに座っていました。
視線を自分の身体に向けると、パンティー1枚だけしか身に着けていません。
慌てて両手で胸を隠し、どうしてこの様な格好で座っているのか思い出してみると、あの後、指とシャワーの刺激で気を遣らされ、朦朧とした意識の中、稲垣に身体を拭いてもらってからパンティーまで穿かせてもらって、ここに連れて来られたのだと知り、羞恥心で消えて無くなりたい思いでした。

突然の海外赴任3に続く

コメント:0

コメント入力フォーム

Home > 不倫・浮気 > 突然の海外赴任2

ブログ内検索
携帯用QRコード

当ブログの携帯用QRコードです。
携帯用QRコード
http://www.moero.biz/i/

新着萌え体験フィード
PR

FTC株式会社

中村元太郎

リーブ21

Return to page top