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三里さん 6

  • Posted by: moe
  • 2010年11月25日 10:27
  • 社内

三里さん 5続き

中田です。
会社の後輩、三里(ミサト)さん(22)の話です。
今回だいぶ進展がありました。

三里さんのミスが原因で徹夜することになってしまった。
入社して一年数ヶ月、だいぶしっかりしてきたけど、仕事って慣れた頃が怖かったりする。

発覚したのは三里さんが帰ったあとの夜8時ごろ。
明日は土曜で三里さんは休み、俺は午前中だけ発送作業の予定だった。

ケータイで緊急呼び出し。
徹夜はたまーにあるけど、三里さんのミスでは初めて。

明日発送予定のパンフ数千部について重大な誤字があったこと。
三里さんの入力確認ミスであること。
徹夜で修正作業をしなければならないことを簡単に説明。

「あ、あの、すみませ・・・」
「今どこ?」
「○○駅です...」
(ここまで30分てとこかな。)
「20分で来てくれる?」
(30分かかってもいいんだけど、事の重大さを知って欲しいからあえて。)

「う、でも、あの・・・」
「何?家族が危篤とか以外だったら、とにかく早く来て。」
(ホントはこんなこと言いたくないって。)

「ハ、ハイ、分かりました。行きますっ。」

約30分後、息切らして三里さん到着。

「すみません、遅くなりました。」

いつもは地味目な三里さんが明るいグリーンのワンピースを着てた。
会社では後ろで縛ってる髪を下ろしてる。

一旦帰ったあと着替えて出かけたんだろうな。

こんな状況じゃなければほっとけないくらいかわいい。
デートだったのかな。
さすがにかわいそうか。
でも仕事は仕事。

さっそく作業開始。
この場合、パンフの誤字部分に手作業でシールを貼ってくしか方法がない。
ひたすら手を動かす地味な内職仕事だよ。

「あ、あの、ホントにすみませんでした。」
「半分以上は、最終チェックを怠った本社の担当営業クンの責任だから。今あっちでもやってもらってるよ。」

「でも、中田さんはこの仕事まったく無関係だったのに。」
「部下の仕事を把握してなかったのが俺の責任。三里さんのミスは俺のミスで、会社のミスだから。」

2人で向かい合ってチマチマと作業しながらの会話だよ。

「でも今回は私ホントに、その・・・」
「今まで俺の方がいろいろやらかしてるよ。そのたびに三里さんのフォローですごい助かってるよ。とにかくがんばろうよ。」

気持ちは1人で引き受けてあげたいぐらいだけど、それじゃ彼女のためにならない。
それにどのみち1人じゃ間に合わないよ。

とにかく黙々と作業、無言の時間が過ぎていった。
と、三里さんのケータイがなる。
着メロはマーチングマーチ(マーチったらチッタカター、のアレ)!

気にしながらも作業の手を止めない三里さん。着信音はなかなかやまない。

「いいよ出ても。」
「すみません...!」

今日デートだったとか彼女は何も言わないし、俺も聞かないけど、まあ暗黙の了解で。
聞くまでもなく電話は彼氏からだなって断定しといた。

オフィスと倉庫をつなぐ入口の陰にかくれて、三里さんは電話に出た。
よく聞こえないけど、軽く言い争ってるのはわかる。

「...だから...、...仕事が...、さっきも言ったし...!もう...!...うん、......わかったよ。」

どんよりした表情で戻ってきて一言あやまると、無言で作業再開。
俺も何も聞かない。
俺の知らない三里さんがいる。
公私混同が好きじゃない三里さんは、聞かれない限りプライベートなことはあまり話さない。

俺もセクハラ発言はするくせに、

「彼氏どんな人?」

とか

「彼氏と最近どうなの?」

なんていう普通(?)のことは聞いたことがない。
みっともない嫉妬で自分がぐちゃぐちゃになりそうなヘタレだからさ。

女子スタッフのうわさ話の漏れ聞こえで、彼氏がいることは知った。
あと学生時代のバイト先の上司らしいこと、9歳離れてること(俺より年上だ)。
知ってるのはこれだけだった。

10分もしないうちに、またマーチングマーチが鳴り始めた。
しばらく無視した三里さんは、電話に出ずにプチッと切ってしまった。

「...いいの?」
「......いいです、すみません。」
「事情は説明した?」
「全然わかってくれないです。」
「今度かかってきたら出てもいいから、もう一回きちんと話つけなよ。」
「...ハイ...」

今度は数十分後、やっぱり電話はかかってきた。
電話に出て、さっきと同じ場所で、さっきより大きな声。
三里さんの大きな声はめったに聞けない。

「...もういいじゃん...!......××君が...、...だから私は...、......なんだってば...!...うん、...うん。......ごめんね...。でも......もう.........だから、うん、......じゃあね...」

ケータイの電源を切りながら戻ってきた三里さん。
なんだか怒ってるようにも泣いてるようにも見えた。

ちょっと間をあけてあげようかな。
はらも減ったし。

「三里さん、コンビニ行って適当におにぎりとお茶買って来てよ。」
「あ、ハイ。...あ!あの、私、おごりますよ。」
「(明るめに!)え、ほんと?やっほう。...じゃあ、甘えついでにさ。向こうのローソン行っておでん買って来てよ。近くのファミマにはないから」
「え、そうでしたっけ?」
(ほんとはあるよ。遠くまで気晴らしに行って来いってことだよ。)
「うん、タネはまかせるから、じっくり考えて買って来て。」
「??......わかりました、行ってきます。」

三里さんが出かけてる間に本社に電話して作業の進み具合を確認。
営業クンが言うには、もし無理なら、間に合わない分は大幅値下げを条件に、後日発送にしてもらえるよう何とか交渉してみるとのこと。

状況が好転するわけじゃないけど、ちょっとはペースを落とせるかな。

俺の思惑どおり時間をかけて、三里さんが帰って来た。
ちょっとは頭冷やせたかな、表情がさっきよりは明るい。

「帰りにファミマの方見たら、おでんののぼり出てましたよ?」
「え、そうだった?ごめんな~、遠くまで。」
「もう、夜は結構冷えるのに...。でも少しは気晴らしに......あ・・・」
「何?実はさぼってたとか。」
「......気つかってくれたんですよね?」
「(いつもは鈍感なくせに...)...知らん。ただの嫌がらせだよ。すまんかった。」
「いえ、ありがとうございます。」
(気づいてくれなかったら実際嫌がらせになりかねなかったな...。)

彼女が買って来たおでんは、容器いっぱいの厚揚げオンリーだった。
意味がわからない。

おにぎりと厚揚げ食べながらちょっと一息。

「これこれこうだから、間に合わなくても大丈夫かも知れないってさ。」
「そうですか。でも私のせいですから。全部やるつもりでとにかくやります!」
「うん、そっか。さすが。でも今はちょっと休憩しよう。」
「はい。」

うーん、と伸びをしてたら三里さんが思い出したように、

「あ、中田さん、私肩もみします。」

え、いいよと言いつつお願いすることに。
もみもみされて気持ちよかった。

三里さんに触れられても、今日は妄想にひたる気にはなれなかった。
しばらく無言でマッサージしてくれたけど。
そのうち頭の上から、スン、スンと鼻をすするような音が聞こえてきた。
...泣いてるのかな...?

「三里さんありがと、もういいよ。」
「...ハイ。」

作業を再開した三里さんはやっぱり涙目になってたけど、俺は何も言えなかった。
2人とも黙って手を動かし続けた。

ずっとうつむいてやってたんだけど、ふと顔を上げたら、三里さんは作業しながら無言で泣いてた。
ポロポロポタポタ泣いてた。

何て言ってあげればいいのかわからない...。

「...三里さん、顔でも洗ってきなよ。」
「...いえ、大丈夫です。何でも...ないです。」
(泣いてるのに口調はしっかり。)

「バカ!それじゃ商品が濡れちゃうだろ。トイレで全部吐き出してきてよ。」
「...ハ、ハイ、すみません...!」

トイレに駆けて行った三里さんの声は聞こえなかったけど、多分思い切り泣いてたと思う。
デート中断で彼氏とケンカか。
仕事のためにドタキャンとか、珍しいことではないけど・・・。

三里さんはまだ若いし、理由が自分のミスだもんな。
しかも入社以来初めて、周りの人間と会社に直接迷惑かける失敗。
で、徹夜仕事。

俺も立場上やさしいことだけ言えるわけじゃないし。
そりゃこたえるだろうな...。
あれでも十分強い態度だよ三里さん。
俺の方が弱いよ...。

しばらくして、少し目を腫らした三里さんが帰ってきた。

「すみません、どうもありがとうございました。」

笑顔でペコリ。
俺も笑顔で

「うん。」

とだけ言って、またまた作業再開。
ここまで休憩はしてきたけど、仮眠とかはしてない。
なんとか完遂の目途は立ちそうだけど、この地味な作業を夜通しって、さすがに眠いよ...。

だいぶ空が明るくなってたから、5時とか6時だったと思う。
ようやく作業が終わりに近づく中、三里さんが本当に何の前ぶれもなく、ポツリと言った。

「...彼と別れました。」
「え......?」

いっぺんに目が覚めた。
俺は思わず一瞬手が止まってしまったけど、三里さんは作業ペースをゆるめることなく、ぽつぽつと話を始めた。
俺はほとんど黙って聞いてた。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

「今日、ていうかもう昨日ですね。会って別れ話するつもりでした。」

三里さんはだいぶ前から、彼とは別れたいと思ってたみたいだ。
初めての彼氏だから誰かと比較はできないと言ってたけど。

変に自信家な彼にずっと違和感を感じてたらしい。
淡白で一方的なセックスに疑問を感じていたことも、遠まわしな表現で話してくれた。

途中から遠距離になった彼が、数ヶ月前さらに遠くへ転勤になった。
会う回数は減っていったけど、その分会うのが苦痛になっていった。

それに反して彼の方は、結婚をほのめかすようになってたらしい。

別れを経験したことがない三里さんは、どうやって終わりにすればいいか分からない。
大嫌いになったわけじゃない。
でもずっと一緒なんて考えられない。

彼の転勤が決まった時も、切り出すきっかけをつかめなかった。
そして昨日、出張を兼ねてこの町に来ているという彼から呼び出された。

会うのは一ヶ月ぶり。
明日は休みだから確実に泊まりになってしまうな、と思ったら、少し気が重くなった。

言われた駅に着き、歩きながら、会う場所を確認しようと電話をした。
すると彼は、泊まってるホテルの部屋で待っていると言う。
会ってすぐ...?

そんな空気を漂わせる彼に嫌気が差して、三里さんの足は止まってしまった。
分かった、と返事をして電話を切ったものの、そこから先に歩き出すことができなかった。

「なんかもうその時に、もうダメだなって、思いました。あの、そのー、するのはいいんですけど。もう私、物みたいな感じがしたので。それで、今会ったらすぐ、別れようって言おうと決めました。そしたらケータイが鳴って・・・」

彼からだと思い、表示をよく見ずに出てしまった。

「はい、もしもーし。」
(いつになく気の抜けた声で。)
「中田だけど。三村さん?」
(苗字で呼ばれるのは、大体悪いことが起こったとき。)
「え、え、あれ?中田さん!?」
(俺の名前は、彼氏と字面が似てるらしい。)

仕事でミスして、怒られて、呼び出し食らって。
別れを告げようと決意したばかりの相手が、何も知らずに今ホテルで待っていて。
でもここから仕事モードにならなきゃ。
すぐに引き返す。

彼に電話して、

「ごめん仕事入った。もう会えない。今日だけじゃなくて、ずっと会わない。」

そんなようなことをなるべく一方的に話して、電車に乗る前にケータイの電源を切った。
(このときだけじゃなく、彼女は電車ではいつもそうしてるってさ。)

電車の中でずっと混乱してた。
初めての大きなミス、初めての彼との別れ。
ミスしたことへの反省と自己嫌悪。
楽しかった頃の彼との思い出。

だけど、こんなときに徹夜で仕事かあ、って思ったら、開き直れてなぜか少しホッとした。

徹夜仕事は何度かやったから慣れてはいるけど、辛いのは分かってる。
しかも今日は自分の責任で、みんなを巻き込むことになるし。

でもだからこそ今はとにかくがんばれる!
自分で取り返す!
それしかない!

「えっとまあ、...いろんなこと考えながら、駅から必死で走ってきたんですよ。」

で、その後、仕事中に電話で口論などがあり。
トイレで泣きながらケータイの電源を入れると、彼からのメールがたまってた。
未練とか、謝りたいとかやり直したいとか。
彼なりの誠意は伝わってきたけど、三里さんの気持ちは変わらなかった。

彼女は自分の思いと本音を全部、メールで吐き出した。
それがトドメとなったのか、そのあと彼からの連絡は今のところない。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

ここまで三里さんが話してくれたところでちょうど作業は終了。
朝7時にはなってたかな?
あとは梱包と発送。
予定通り朝発送できる!
間に合った!

「間に合ってよかったです...。本当に、どうもすみませんでした。」
「一応本社にも電話して、報告しといて。まだいると思うよ。」
「ハイ。向こうにもほんとに申し訳ないことしました。」
「大丈夫。営業クンには全部おめーのせいだ!って言っといてやったから。逆にお礼言われるよ。」
「えーっ。なんかかわいそうですよぉ。」
「いや実際、最終チェック責任はあいつだもん。それに同じ会社でも、部署同士って、なんか責任のなすりつけ合いになるとこあるんだよ。そうなったら、俺が三里さんを守るのは当然。」
「...ありがとうございます。」
「でもミスはミスだから!それは謝って、ちゃんと反省して対策立てるように!」
「ハイ!すみませんでした!」

ぼろぼろだけど、すがすがしい笑顔だったよ!

でも正直なところ、先輩ぶってえらそうなこと言いながら、俺は愕然としてた。
女の子ってこんなに強いものなの?
三里さんは内気で人見知りでおとなしくて、そんな彼女が初めての別れ話を抱えたまま、自分の感情を一生懸命押し殺して。
突然やってきた危機を乗り越えた。

自業自得とはいえ、泣きながら、打ち明け話をしながら、彼女の仕事はゆるまなかった。

もともと仕事に対する姿勢は定評があったけどね。
改めて俺は、彼女の存在の大きさを実感して、心の底から尊敬した。

俺なんかより強いよ。
かなわないよ。

さてそれから。
発送準備をして完了。
業者が集荷に来るまであと1時間くらい。

「あー、終わったー!さてと、あとはぼーっと待つだけだから、三里さんは帰っていいよ。」
「とんでもないです...!私も責任もって、最後まで見届けます。」
「そう言ってくれると思った。でも、寝て待っててもいいよ。」
「大丈夫ですよ。逆に頭が冴えて、なんかもうビンビンですから。」
(ビンビンて何だ?)

正直俺1人なら仮眠するところだけど。
三里さんがそばにいるし、もったいないから起きてる。
(なんかそんな歌あったな。)

「............さっきさ...、何で話してくれたの?」
「...とんでもない迷惑かけた上に、恥ずかしいトコ見せちゃったじゃないですか...。話さないわけにはいかないし、それに...。中田さんのことは信頼してますから。何も聞かないでいてくれたのは、嬉しかったです。」
「聞かなかったんじゃなくて、あの時の状況じゃ誰だって聞けないよ。」
「じゃ、今聞いてもいいですよ?」
「えっでも、ほとんど話してくれたからなあ。でも、うーん、彼は納得してくれたのかな。」
「...多分。」
「俺だったら、こんなに突然終わりが来たら、ストーカーになっちゃいそうだな...。変態だから。」
「あはは、ホントそうですね。」
「うわ、否定してくれないよ。」
「だって中田さん、ときどき変なこと言いますからね。意味がわからないこともありますけど。あれセクハラですよね。やめた方がいいですよ。」
「(ガーン!)うわ、ごごごめn。」
「私以外には。」
「え...?」
「ああいうの、他の人にやったら問題になるかも...。中田さんクビになっちゃいますよ。笑」
「え、え、でも...三里さんは?」
「気にしません。中田さんがいなかったら、私もここにいないですよ。」
「でも、...ごめん、いつも俺調子に乗って...つい。」
「いいですよ。前の職場でのパワハラといじめに比べれば、逆に楽しいくらいですよ。中田さんはちょっとくらいHなこと言ったって、仕事では頼りになるし。私なんかを頼ってくれるからやりがいありますよ。」
「三里さん俺...」
「私も鈍いから気にならないですよ。ちょっと楽しいセクハラくらい、したくなったら全部、私にして下さい。他の人には絶対ダメですよ?あ、あと、程度にもよりますよ!笑」

俺もう泣きそうだった。
いや多分泣いてた。
この子、いつのまにこんなに強くなったの?

俺のこと、ここまで信頼してくれてたの?
あんなの、ただのゆがんだ愛情表現だよ。
だから他の人にするわけない...。

...ひとつ確かめたいことがあった。
椅子に座ってた俺は立ち上がって、三里さんと向かい合った。

「程度によるっていうけど...この程度だったら...?」

三里さんの小さな顔を両手で両側から包むようにして...下ろしている髪を、耳にかけた。
彼女は無言のまま、まったく逃げようとしなかった。

今日初めて見る彼女の耳は、真っ赤になってた。

恥ずかしいとき、気まずいとき、真っ赤になってしまう三里さんの耳。
ドキドキしたときもそうなることを、今初めて知った。

両手をそのまま三里さんの肩に置いた。
俺泣いてた。
三里さんも泣いてた。
三里さんが目をつぶった。

鼻水の味がしたらどうしようかと思ったけど、どうでもいいやって思った。
俺にとっては、前にいつしたのか思い出せないくらい久しぶりのキス。
最高にかわいくて、どうしようもなく大好きで。
いつもそばにいるのに手が届かないと思ってた女の子と。

...えーと、この勢いで、このままここで?
...いやせめて倉庫で、いやいや。
あ、今ゴム持ってないや。
などなどということが、一瞬も頭をよぎらなかったと言えばうそになるけど!

実は、「体」がまったく反応しなかったんだ。
ピクリとも。
会話と妄想だけでやばいことになった日もあったのに。

自分が、実は三里さんにずっと甘えてたんだってことに、今さら気づいて情けなくなったんだ。
三里さんは、俺がいなかったら自分はどうにもならない、と思うほど俺を信頼してくれてる。

それを思えば俺のいたずら心なんて小さなことだと言ってくれた。

ちがうよ三里さん、それは俺の方だよ!
今初めて、三里さんがいなくなった職場を想像して、また泣きそうになったよ。
そんなこと考えられない。俺の方が、三里さんの存在に甘えてたんだよ。
三里さんがいたから、三里さんに頼りにされたいから、俺はがんばれたんだ。
俺は絶対に、彼女を裏切っちゃいけないと思った。

小さな三里さんを抱きしめて、ありがとう、とだけ言った。
三里さんは、いえ、こちらこそ、と小さな声で答えてくれた。

初めてのキスは、涙でしょっぱい味がした?
いやよくおぼえてない。
三里さんはそんな、しゃれてるんだか、くさいだけなんだかわからないことは言わなかった。

「中田さん、タバコクサイ...」
(ある意味くさいか・・・)

あれー...。
台無し?
いやこれは三里さんの照れかくしだよ。
体を離して、俺は10本近く残ってたマルボロをポケットからゴミ箱に投げ捨てた。
それ以来一本も吸ってないよ。

商品の発送が終わった後、その日は帰った。
とにかく疲れてたから。
俺がもうちょっと元気だったら、そのまま今日デートに誘えたかな?とも思ったけど。

でも三里さんも、こんなにいろんなことがあった日は記憶にないって言ってた。
休ませてあげたいし、これからも毎日会えるから、何もあせることないよ。

帰り際に、三里さんの方から(!)キスしてくれた。
ちょっとだけ背伸びして。

「これからもよろしくお願いします...!」

と。

さて、これで俺は幸せなのかって言うとなかなかそうは行かないんだけど。
前に社内恋愛で失敗して(詳細は省略)ぼろぼろになったことがあるから。

このことと、三里さんに彼氏がいることを、ヘタレで彼女を口説けない言い訳にしてたけど。
三里さんが「片思いの後輩」から「優秀な部下で彼女」に変わった今。
これからのことを真剣に考えないといけないんだ。

今までも仕事上は割り切って接してきたつもりだけど、これからは自信ない。
どうしよう...。

三里さん 7に続く

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